スクールカウンセラーの記録はどうする

スクールカウンセラーをしていると、カウンセリングばかりがぎっしり詰まって、記録を書く時間もなかったりします。また、保護者や子どもとのカウンセリングを受けて、担任の先生と情報共有しなければならないことも生じますが、その時間もなかなか取りづらかったりします。

スクールカウンセラーの活動の際に記録をどうしたら良いか考えてみました。

スクールカウンセラーの守秘義務

スクールカウンセラーに限らず、カウンセラーにはクライエントの秘密を守るという守秘義務があります。しかし、スクールカウンセラーは、学校の中で多くの場合週に1回程度の勤務です。スクールカウンセラーの支援だけでは、子どもたちを十分にサポートすることはできません。

また、そもそも学校は、チームで教育活動を行っているため、スクールカウンセラーだけで支援するのではなく、担任の先生や学年の先生方、養護教諭などの先生方が連携協力して子どもを支援しています。

そのため、スクールカウンセラーも先生方と情報共有をして子どもを支援することが大切になります。

つまり、スクールカウンセラーは、守秘義務を負っているだけはなく、報告の義務も果たさなくてはならないのです。守秘義務と報告義務については、本田(2015)は、石隈(2008)の議論を元にして次の図のようにまとめています。

スクールカウンセラーの守秘義務と報告義務
本田真大 2015 援助要請のカウンセリングー「助けて」と言えない子どもと親への援助 金子書房

こういったことをもとに、スクールカウンセラーの守秘義務については、スクールカウンセラーが1人で守秘義務を果たしていくということではなく、チームとして集団で守秘義務を果たしていくという「集団守秘義務」という考え方が発展してきました。

集団守秘義務に関して、本田(2015)は、石隈(2008)の議論を元に次の図のようにまとめています。スクールカウンセラーが守秘するべき内容、援助者のチームが守秘するべき内容、学校全体として共有するべき内容の3段階に分けて捉えられています。

スクールカウンセラーの守秘義務と学校における情報共有のレベル
本田真大 2015 援助要請のカウンセリングー「助けて」と言えない子どもと親への援助 金子書房

スクールカウンセラーの記録

こういった守秘義務の構造を踏まえると、スクールカウンセラーの記録は、学校における情報共有のレベルに応じて記録できるようになっていると記録しやすいのではないかと思います。

一つの記録用紙に、こういった構造に基づいて記録をしていくことは極めて困難です。別々の記録用紙に書けば良いのですが、重なる内容は全ての記録用紙に記入することになるので、二度手間、三度手間となってしまいます。

パソコンのソフトで、こういった構造を元に、見ることのできる人を制限した記録を作成することができたら、記録作成の時間を少なくすることができて、その分、カウンセリングの時間に充てることができるようになるかもしれません。

1件のカウンセリングについての記録で、ある部分から先は制限がかかっていてパスワードを知っている人だけ見ることができるという仕組みになっていると良いと思います。

例えば、相談の日時や来談者は先生方は誰でも見ることができますが、チーム援助のために必要な内容は、チームのメンバーだけ知っているパスワードで保護されているというのが良いと思います。さらに、カウンセラーだけが守秘するべき内容はまた違うパスワードで保護されていて、スクールカウンセラーだけがパスワードを知っているというのが良いと思います。

記録ソフト

ところで、スクールカウンセラーとして、保健室にはよくお邪魔させていただくのですが、養護教諭の先生達は、保健室管理ソフトというようなソフトを使って記録を取っているようです。そのソフトを調べてみましたが、上記のような機能は持っていないようなので、スクールカウンセラーとして使いにくいと感じました。

上記のような仕組みを持ったソフトがないか、色々と探してみると、使えそうなソフトを発見しました。

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スクールソーシャルワーカーの方のためのソフトですが、スクールカウンセラーにも使いやすいように感じました。予約の管理にも使えるようです。私も使えたら使いたいと思うソフトです。

ただ、私は今のところ、ほとんどの学校では仕事用のパソコンがありませんので、まずそこから始めなくてはなりません。

文献

本田真大 2015 援助要請のカウンセリングー「助けて」と言えない子どもと親への援助 金子書房
石隈利紀 2008 秘密保持と情報の共有 児童心理2008年4月号臨時増刊、69ー75 金子書房


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