スクールカウンセラーは学校でどのくらいの時間が必要か計算してみた

スクールカウンセラーはほとんど全ての公立中学校に配置されていますが、平均では週あたり約4時間の配置となっています。相談の件数や情報共有の時間に比べて勤務時間が少ないために、サービス残業を余儀なくされているスクールカウンセラーも多いと言われています。例えば、心理職ユニオンによる東京都のスクールカウンセラーへのアンケート結果では、87%のスクールカウンセラーが残業をしていると応えています。

そこで、実際の所どのぐらいの勤務時間が必要なのかを試算してみました。400人の生徒がいる中学校(各学年3クラス)を例に考えてみます。

ご留意ください
  • 1つ1つの活動について、時間をかなり少なめに見積もっています
  • さらに時間があれば、同じ活動でも回数を増やすなど、より充実した活動ができます
  • スクールカウンセラーや学校によって重点の置き方に違いがあるため、前提が変わってくる場合があります
時計と手帳

カウンセリングに必要となる時間

試算の根拠として、不登校の生徒数を基に考えてみます。令和4年度の不登校の中学生は、193,936人で全生徒の5.98%となっています(令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)。

この中学校の生徒400名にこの割合を単純に当てはめると、不登校の生徒は約24名となります。そのうち半数で本人か保護者がスクールカウンセラーのカウンセリングを利用すると考えると、12件の不登校のケースでカウンセリングを行います。

それだけではなく、不登校以外の相談もあります。各クラス1件の相談があると考えると、不登校以外のカウンセリングのケース数は12件となります。。

つまり、全体で24件のケースでカウンセリングを行うと考えます。

全てのケースで毎週カウンセリングを行うわけではありません。隔週や月に1回の場合もあります。今回は、各頻度が均等になると考えてみます。

 毎週のカウンセリング:8ケース⇒月に32回
 隔週のカウンセリング:8ケース⇒月に16回
 月1のカウンセリング:8ケース⇒月に8回
 計24ケース ⇒ 月に計56回のカウンセリング

となりました。

各カウンセリングでは、準備に10分、カウンセリング45分、記録15分で計70分の時間が必要となると考えます。

 月56回×70分=3920分

となります。カウンセリングを実施するために毎月3920分の時間が必要となります。

コンサルテーションのための時間

コンサルテーションは、カウンセリングを行っているケースでもそうではないケースでも行われています。カウンセリングを行った後には、ほとんど場合コンサルテーションが行われています。これを15分と考えます。

月56回×15分=840分

となります。

また、SCがカウンセリングを行っていないケースでもコンサルテーションは行われます。各クラスで1件と考えます。そして1つのケースで月に2回で10分のコンサルテーションが行われると考えます。

12クラス×1件×月2回×10分=240分

となります。

つまり、コンサルテーションには毎月1080分の時間が必要となります。

その他の活動(毎月のように行われるもの)

スクールカウンセラーはカウンセリングやコンサルテーションをだけを行っているわけではなく、その他の活動も色々な活動をしています。

連携のための情報共有や話し合い

スクールカウンセラーはチーム学校の一員として活動してるので、学校内のキーパーソンとの情報共有や連携のための時間は欠かせません。

スクールカウンセラーのコーディネーターとの連携:月4回×1回30分=120分
養護教諭との連携:月4回×1回20分=80分
管理職への報告や連絡、情報共有:月1回×20分=20分

つまり、連携のための情報共有や話し合いのためには、毎月220分必要となります。

行動観察

教室に行って授業中や休み時間の子どもたちの様子を観察して、アセスメントの情報を集めることも大切です。そのための時間も必要です。

12クラス×15分×月1回=180分

お便りの作成

スクールカウンセラー便りを発行して、こころの健康に役立つ情報を発信することもスクールカウンセラーのひとつの仕事です。

月1回×2時間=120分

生徒指導部会などへの参加

スクールカウンセラーも生徒指導部会や教育相談部会などの会議に参加することが重要です。多くの場合、週に1回程度開催されていますが、必ず参加できるとは限らないので月に1回の参加と考えます。

月1回×50分=50分

その他の活動(年間1~数回の活動)

校内研修会など年に数回の活動も色々とあります。実施する月と実施しない月があるため、月あたりの時間を計算します。

心理教育の授業(2年生計4クラスで年1回実施)

相談室ではなく、教室へ出向いて心理教育の授業を行ってこころの健康について学んでもらう授業を行うことも求められています。

準備:3時間
実施:4時間 年間計7時間
7時間÷10ヶ月=月あたり42分

校内研修会(年1回)

先生方に、子どもの支援や指導に関する知識や技能を学んでもらうための研修会を行うことも求められています。

準備:3時間
実施:1時間 年間計4時間
4時間÷10ヶ月=月あたり24分

校内ケース会議

丁寧な支援を必要としている子どものことについて、関係職員が集まってケース会議を行うことがあります。スクールカウンセラーも重要なメンバーの1人ですが、必ず参加できるとは限らないため、年に5回参加できると考えました。

年間5回×60分
準備に毎回30分
(60分+30分)×5回÷10ヶ月=月あたり45分

全員面接(1年生130人に年1回実施)

スクールカウンセラーに相談することへの抵抗感を少しでも下げるために、生徒全員との面接を行うことがあります。1年生だけで行うと考えました。

130人×5分=650分
準備:60分
(650+60)÷10ヶ月=月あたり71分

スクールカウンセラーの活動のために必要な時間(月あたり)

合計5752分=95.87時間
 ⇒1日8時間勤務では月に11.98日、1日7時間勤務では13.70日
 ⇒週あたり3日(月12日)の勤務が必要となる。

結論:生徒数400名の中学校では、スクールカウンセラーの勤務は少なくとも週に3日が必要となる。

この数字は少なめに見積もった数字ですので、実際は週に4~5日の勤務が妥当だと思います。

実際はスクールカウンセラーは全国平均では週あたり4時間の勤務となっています。カウンセリングが必要であっても、利用できない子どもたちも沢山いることが分かると思います。

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